「コールサック」日本・韓国・アジア・世界の詩人

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笠原 仙一(かさはら せんいち)

<経歴>


1954年 福井県生まれ、福井県越前市在住。

詩集『われら憤怒の地にありて』、『月の夜の詩』、『天涯の郷』、『ひとと宙』、『明日のまほろば~越前武生からの祈り~』

所属「日本詩人クラブ」「詩人会議」福井詩人会議「水脈」「福井県詩人懇話会」。



<詩作品>



武生(たけふ)の朝




僕の朝は仕事拒否児の時計のようなものだ


眼がさめても 頭の中は夜の茶色いカタツムリ

それでも思考という長針があるから

カタツムリのままベッドの上でグルグル

「今日一日

  布団の中でずる休みしていても なあ 

   十時ごろには体はうだるし 寝ているよりは

    起きたら 何か良いことがあるかもしれん」などと

    今日の一日を一回りして


そう 大好きな

朝のコーヒーと リンゴも待っている

針がたどり着くと

ロボットのように手足が伸びはじめ

豆を挽きはじめる


香ばしいコーヒーの香り

パンの焼ける匂い


自然に触角が立ち始め

次第に眼がさめて 首が動き始める


ちょうどその頃

決まったように 七時の大寶寺の鐘の音が

四百年の歴史のままに静かに打ち寄せてきて


働けよー

今日も始まったぞー


すると僕の一日は 昔の職人と同じように

真面目に カタコト

カタコト トントン と動き始める


やっぱりココは武生の町なのです



*武生…かつて「府中」と呼ばれ、越前の国の国府が置かれるなど、福井県中部

    の歴史あるまち。旧・武生市は二〇〇五年の町村合併で新設の越前市と    なったが、いまもJR武生駅などにしっかりとその名を留めている。







笑顔




   神さんにつつまれて

   命あるものは生きている


ひとの笑顔は美しい


でも

不思議なことに

ひとはこころを忘れて自然には笑えないのだ

こころがそのまま笑いにならないと


悲し笑い 怒り笑い

含み笑い 勝利笑い 傲慢笑い

いろんな笑いがあるけれども

美しい笑いは

やっぱりみんなとこころが通じあった時だ

こころとこころがお話しできた時だ

やさしさにつつまれていることを感じた時だ


みんな一緒に大きな声で

ワッハッハ ワッハッハ と笑いが出たときは

こころはもう海の神や山の神さんのように

幸せになって


そう その時が一番幸せ







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「コールサック」(石炭袋)120号 2024年12月1日

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